神ゲーラッシュの谷間に生まれ落ちた神ゲー
デスストランディング、ポケットモンスター、新サクラ大戦、龍が如く7、ファイナルファンタジー7REMAKE、サイバーパンク2077etc
今年の10月から来年の3月までゲーマーなら目を離すことのできない超大作ラッシュが続いている。
今現在ポケモンがひと段落し、新サクラ大戦を待っている方も多いのではないかと思う。だがそんな合間の期間に発売された綺羅星のようなゲームがある。それが十三騎兵防衛圏だ。
パプリッシャーは堅実でやりごたえのあるゲームに定評のあるATLUS、デベロッパーはオーディンスフィア、ドラゴンズクラウンなどヴィジュアルと世界観の作り込みにかけては天下逸品のヴァニラウェアだ。
正直、最初にこのゲームの情報を見たときにあまりキャッチーさを感じなかった。どこか薄暗い雰囲気、タイトルからも無骨な感じを受ける。キャラクターも今までのヴァニラウェア作品からすると尖った部分がマイルドになりフックが弱かった。
ヴァニラウェアといえばファンタジーであり、現代風の作品は合わないのではないかとさえ思っていた。それでもこのゲームを購入したのはヴァニラウェアだったからの一言に尽きる。
そして今私は、このゲームを購入した自分の判断に感謝している。
ジャンルは?
このゲームは何をするゲームなのか遊んでみるまでよくわからなかった。
ジャンルはあえて言うなら重厚なストーリーに彩られたTD(タワーディフェンス)タイプのゲーム。アドベンチャーパートが大半を締めるゲームかと思っていたが、TD部分も物量はしっかりあるので文字を読むだけではなくゲームとして遊んでる感覚はしっかりある。
TDではあるが、RPGのようにキャラクターやユニットを成長させていく要素もあるので、シミュレーションRPGが好きなユーザーにもとっつきやすいだろう。難易度はやさしめなのでゲーマーなら最高難易度で。その手のゲームが苦手な人やストーリーだけ見たい人なら一番簡単な難易度で遊べばストレスフリーだろう。ちなみに難易度の選択はいつでもできるので、途中で気が変わっても安心だ。
なおアドベンチャーパートとTDパートが明確に分かれているが、ある程度自分の好きなタイミングで進めることができるのでバトルをしたいストーリーを進めたいという欲求を邪魔されずとても快適だ。このあたりの感覚は実際に遊んでみるとすぐにわかるはず。
謎が謎を呼ぶストーリー
今作の主人公は13名とかなり多い。各主人公ごとにシナリオは分かれていて、主人公たちの行動が複雑に絡み合う群像劇的な作りになっている。
巨大ロボットに憧れを抱く映画マニアの少年、特務機関のエージェントとなり親友失踪の原因を探るスケバン。マスコット(?)と契約して魔法少女になる黒髪ロング。80年台のリーゼントヤンキーが滅びの運命を回避するための無限ループ。
軽くざっと上げただけでも個性の塊みたいで、一見調和しなさそうな設定のキャラクターたちばかりだ。そんな個性的なキャラクターそれぞれの行動が複雑に重なり合い、全てのエピソードで続きが気になり飽きさせない作りになっている。
最初のチュートリアルの役割も兼ねているプロローグを全て終えた時点で、ストーリーには謎しかない。そして早く続きを知りたいという欲求が抑えられない。読み進めるごとに、そんな疑問へほんの少しだけ回答を用意してくる。そしてそれと同時に新たな謎が生まれ膨れ上がる。収拾がつくのか不安になってくる膨れ上がり方だ。だがそのバランスは絶妙で意外と心地よい。
そうこうしているうちに顔と名前が一致せず入れ替わっているキャラが出てきて、ますますシナリオは複雑怪奇混迷の沼にはまっていく。これを書いている時点でもうすでに10時間はプレイしているがいまだにストーリーの全容がみえてこない。これじゃあ寝れないじゃないか。
ヴァニラウェアが贈る渾身のヴィジュアル
ヴァニラウェアといえば2Dアートの表現力にあるといっても過言ではないが、キャラクターの仕草、背景のアート全てに置いて手抜きを一切感じさせない。いつもの職人芸はここでも健在。
今作は特に光の表現が印象的だ。教室から差し込む夕陽、ネオン煌く夜の繁華街、匂いさえ感じられそうな古びた旧校舎の独特な雰囲気など。ただの一枚絵で済ませるような場面でも細かく作り込みがされてあり見ているだけで楽しい。
また冒頭でフックが弱くキャッチーさを感じないと評したキャラクターデザインだが、けっしてそうではなかった。あくまで今作の作風に合わせているのだ。
今作はキャラクターの演技に抜かりがない。胸の大きな保険の先生との会話中にちらりと胸元を見て赤面する十郎。重大な秘密を立ち聞きしてしまったときに、側で曰ありげに俯いている親友。好きな男子のために料理する時にロングの髪をポニーテールにまとめてエプロンをする等、演出が非常に繊細なのだ。そんな繊細な表現にフックを意識して誇張しすぎたデザインはかえって浮いてしまうだろう。
全世代に刺さるものが感じられるゲーム
人によっては今作は令和のガンパレード・マーチと評している方もいるようだ、たしかに受ける印象はそれに近いものがある。また個人的にはPS1時代の秀作ゲームのような空気を感じる。他にも少女漫画のテンプレートのようなシーンがあったり、怪獣と巨大ロボという古典的ともいえる要素は特撮世代にも受け入れられやすいだろう。かといって古臭いだけではなく最近のアニメのオマージュも仕込んであったりと実に欲張りだ。
キャッチコピーの「全ての世代の少年少女に贈る!ジュヴナイル群像劇本格SFアドベンチャー!」はまさにその通りで、幅広い世代に受け入れられる素養があるゲームだと確信している。
まだまだ全容の見えないゲームだがクリアした時には改めて感想を書きたいと思う。
公式サイト http://13sar.jp/
十三機兵防衛圏 - PS4