画像AIは絵描きを殺してしまうのか?
ちょっと煽り気味の見出し。
私の中でAIアートといえば、去る1〜2年前の話。SNS上で「AIが絵を描く」といった趣旨の見出しを見かけたのが始まりです。
その時にAIが作画した絵はなんとも名状し難い、気持ちの悪いアートのような趣でした。それを見て私は「フフン、AIなんてこんなものか。やっぱり創作は人間じゃないと無理だな」と思った記憶があります。
しかしそんな思惑をよそに、あれよあれよと技術が革新され、今年の7月ごろに公開されたMidjourneyが世に出たことでAIが描く画像の世界は一変します。
まるで人が書いたようにしか見えないハイクオリティな絵に度肝を抜かれました。
さらにその翌月の8月。オープンソースとして公開されたstable diffusion他、派生サービスによって、今まで絵を描いたことのない人でも
簡単にそれらしい画像が生成可能になりました。
この一連の流れは絵を描く人たちも大きな衝撃を与え、猛反発されることになりました。
かくいう私もそういった趣味持ちの端くれです。
AIが描く絵は自分が描くよりもずっと情緒的でテクニックを感じさせるので心中穏やかではありませんでした。
しかし、これを受け入れず発展に足枷をつけるのも嫌かなーというのが今の正直な気持ちです。
私の本業であるデザイン制作になりますが
バリバリのロジックで人が見ていて気持ちが良いと思うものの類型が決まっているものなので、
ある程度のサンプルと人間の評価を集約すればあっという間にAI化できちゃいそうですよね、こわいこわい。
しかしこういった便利なツールが、仕事のあり方を変えてしまう事は自分が見てきた範囲のなかでもままあることなので、
世間にあるものを使ってご飯食べれるようになるしかないのです。
私にはラッダイト運動がどうたらとかそういう賢げな話はできませんが、できてしまった以上は受け入れるしかないですね。
それはともかく、これからの時代グラフィックに関わる分野がAIありきで物事が進むことは避けられなくなると思うので、
私も最低限の感覚を持っておかねばといろいろと触ってみました。
ちなみにアイキャッチ画像もAIさん作画です。スゲえ!
今回使用するAIはNovelAI
stable diffusionが海外のDanbooruというユーザー投稿型の画像サイトのデータを学習して制作されたもので、
それって著作権的にどーなの?とか、いつの間にかAIの学習素材にされていて気分が悪いなど絵描き・非絵描き問わず紛糾しています。
絵は一枚に対して尋常ではないエネルギーを費やして描くものなので、AIの学習素材として使われることに難色を示す方の言い分はとてもよく分かります。
一方で絵描きは他人の絵を見て真似て上手くなって行くものだという意見もあり、それもまさにその通りなので
じゃあ人間とAIの違いはなんなの?とそれはもう泥沼で語り出すと非常に長くなってしまうので、今回は割愛します。
正直どっちも分かる。
そんなこんなで使用してみました。
いくつかプロンプト・・・俗にいう呪文詠唱を回してみましたが、なるほどあっという間にすごい絵がポンポンと量産されます。
数秒でため息が出るような美麗なイラストがでてくるのでシンプルに楽しいですね。
たまにツッコミどころのあるものを生成してくるのも面白い。
本当に超高速でいい感じのイラストが生成されるので最初は楽しかったのですが、文章ベースで画像を生成するのはすぐに飽きがきてしまいました。
やっぱりこれは他人の絵を元に、ガチャガチャを回してるだけなので、自分が予測していないようなものができ過ぎてしまうのです。
AIによって1から10まで作ってしまうのは、絵を趣味にする人にとっては「何か違う」という感覚が拭えないのではないでしょうか。
あと1枚絵を描くときにとても大事ないつ・だれが・なにを・なんのために・・なぜ?どのぐらい?という
5W1Hの要素が曖昧なので、一見するとすごい絵なんだけど
それでなにを伝えたいのか?そのために必要な表現は何なのか?そういう観点が一切感じられず(Aiだから当たり前だけど)
すごく空虚な絵でもあるのですよね・・・。
この絵を使ってなにを成し遂げるかという目的がないとAI作画に未来はないと思いますが
AIの進化もここが終着駅であるはずがないので、今私が感じていることも近い将来にタワゴトになってしまうのでしょう。
ただ自分のイメージできていないデティールを付加してくれるという点はとても可能性を感じるので
自分が描いた下絵を元に、その先の方向性をAIに提案してもらうという使い方はアリかと思いました。
というわけで次の使い方の模索のために、自分の落書きに大体の色をざっくりのせて
AIにここから先のデザインや塗り方の方向性を提案してもらうという実験をしてみました。
元絵はこちら
まさに落書き!って感じの線もぐちゃっとしてて、色も適当に一色で影もほぼなしの状態です。
これを元に幾つかのプロンプトを付加し、プロンプトの影響度(Strength)を0.1ずつ刻んで上げて出力してみました。
数値を刻む理由は、AIの影響具合をある程度自分で意識してコントロールできなければ
ツールに使われる結果になって意味がないと考えたためです。
Strength0.1
ほぼAIの影響が感じられません。これでポイント消費するのはもったいない(貧乏性)
Strength0.2
腕のフリルが崩れたり、表情に若干の変化が見られます。勝ち気そうなのがちょっと好き。
Strength0.3
スカートのデティールなど細かいところの説得力が増したかな?
Strength0.4
Strength0.4では明らかに独自のデティール、落書き以上のクオリティがでています。
Strength0.5
凄っ、かわいい!もう完全に元絵のクオリティを凌駕してしまいましたね。しかし下腕の比率と手が怪しい・・・。
デザインやデティールの検討ならこのぐらいのStrengthで回して、必要なところを自分の絵に落とし込むといい気がします。
胸のラインとか、スカートのレイヤー状のツートーンとか取り入れたいです。
Strength0.6
Strength0.6で元絵とは別方向に行ってしまいました。なんとなくVtuberにいそうなデザイン。
破綻もかなり抑えられていますし、塗りも綺麗。
しかしここまでやられちゃうと、もう自分の絵とは完全に違うものかな。
Strength0.7
!?
Strength0.7に来て元絵を完全無視。色味などの片鱗はありますが・・・。
プロンプトの方の強さが勝ってしまったということでしょうか。
ちなみに他の画像でも試してみましたが、元絵から激変するタイミングは画像によって若干ズレがあり
元の絵のデティールがしっかりしていれば0.5ぐらいから発生し出す気がします。
Strength0.8
Strength0.7よりもライティングにエモさを感じますが、違いはあまりないかな・・・?
Strength0.9
とうとう色味の影響も無くなってしまいました。逆になにを参考にしたのか。
Strength0.99(最大)
背景に謎の黄色い円が生えてきました。元絵はバターになってしまったのでしょうか・・・。
おわり
ここまでやってみて、この使い方は自分的にはアリだなと思いました。
あくまで最終は自分が描くという前提で、AIに自分の絵に足りないものを提案してもらうのは今までにない感覚。
しかし気軽に使うにはUIが少々使いにくい、プロンプトはAIの学習元のDanbooruのタグの知識が必要、使うたびに微量のお金が発生するというところが気になります。
月額4,500円ぐらい(円安が憎い)で月に10000ポイントがもらえますが、一つの画像を提案してもらうと大体5ポイントぐらいかかります。おおよそ2,000枚ですね。多いような少ないような。常用するにはちょっといやだなぁという感覚。
クリスタやフォトショップに画像の提案機能として実装されたら喜んで使うと思いますが、提案のためだけにNovelAIを継続はちょっとナシですね。
こういった使い方ならば、純国産のMimicが求めるものに近いものになりそうなので、
ひそかに注目しています。